このブログは僕(ジュン)とエリカ、カノくんの3人のストーリー。
あらゆるシェアリングを活用して、セレブライフを探求している。
「ジュンさん、秋晴れでちょうど気持ちのいい気温ね。あっ、もう八王子についたんだ。あそこに見えるのが高尾山?」
エリカが助手席で大きく背伸びをした。オープンカーなのでどこまでも背伸びができる。秋晴れの青空をバックに、エリカの白く細い腕が輝いて見えた。
中央高速を走り、八王子ICで下りる。
信号待ちをしていると歩行者だけでなく、隣の車内からも身を乗り出してこちらに注目していた。
エリカがスタイル抜群の美人だということもあるだろうが、今日は真っ赤なフェラーリだ。注目の的になるのは当然である。
それでも自然体でいられるエリカは、日ごろからこういった視線に慣れているからだろう。僕としてはこの優越感は別格である。
その日の気分やニーズに合わせていろいろな高級車を運転できるNoleggioに感謝だ。
今回は「フェラーリF430スパイダー」をシェアさせてもらった。
スパイダーはフェラーリのオープンモデルで、ソフトトップ(幌)を開いて中央高速を100km/hのスピードを出してドライブしても、風を巻き込まずに快適なドライブができた。
帰り道に少し寒く感じたらボタンひとつだ。このソフトトップはなんと20秒で手軽に開閉できる。
グリップも良く、フェラーリの運転は素晴しく心地よいが、ミッドシップエンジンなのでトンネルに入るとエンジン音で会話が遮られてしまう。
この先の山梨県までドライブに行くときはトンネルが多くなるので、そういった機会があれば考慮した方が良さそうだ。
「さて、今日の目的地はここからすぐだ。美味しい懐石料理が待ってるぞ」
「食欲の秋って言葉は本当ね。もうお腹がすいてペコペコよ。なんていう名前の料亭なの?」
「鶯啼庵(おうていあん)という名前さ。鶯のさえずりが聞こえるひよどり山の庭園が魅力だな。鶯は梅の咲く時期の鳥だけど、その庭園は春だけじゃなく、四季折々の情緒が豊かで素晴しいんだ。冬の雪が積もった景色も最高だよ」
「へー、楽しみ。ジュンさんって、ほんとうにいろいろな美味しいお店を知っているわよね。四季折々に誰を連れて来ているかは聞かないけど」
「いや、…… 娘とよく来たんだよ。おっ、見えてきた。あれが鶯啼庵だ」
ついついお喋りが過ぎたようだ。エリカはこう見えて意外に焼きもち焼きなところがあるので、余計なことはあまり言わない方がいい。
僕はフェラーリを降りると、エリカをエスコートしながら、鶯啼庵のエントランスに向かった。優しい照明が出迎えてくれる。
「とってもいい雰囲気の料亭ね。今度、外国の友人に勧めてみよう」
エリカと僕はしばらく店内の和文化を鑑賞。心落ち着くひとときを過ごした。
そしていよいよ食事の時間。完全個室なので感染対策は万全だし、プライベートも守られているから安心だ。ゆっくりと懐石料理を堪能できる。
僕は運転があるのでアルコールは飲めないが、八寸の献立を見ただけでも日本酒が飲みたくなってきた。
「エリカは気にせず、日本酒を飲みな。純米大吟醸楽しみにしてただろ」
「私だけ、いいの?」
「ああ、この店には利酒師秘蔵の隠し酒もあるからな。ゆっくりと日本文化を味わいながら楽しんで」
「じゃあ、お言葉に甘えて、黒龍いただこう!」
次々に運ばれてくる料理に否が応でもテンションは上がってくる。
「口すすぎのお椀は、もろこし豆腐だな」
「美味しい!」
「このお店は月によって献立も変わってくるからな。季節の旬の味を楽しめるんだ」
「向付って、お刺身のことなのね。これもお酒に合うわー。なんだかすっごい贅沢をしている気分になってきた」
CAの仕事をしているエリカはコロナ禍の影響でずいぶんと暇を持て余していたが、最近はようやく海外運行も再開し始めて、エリカにも笑顔が少しずつ戻ってきている。やはりエリカは仕事もプライベートも充実していた方が明るく、魅力的だ。
「炊き合わせは、伊勢エビね。これも美味しい! シメのご飯は、甘鯛の土鍋ご飯かー。不思議なほどどんどん食べれちゃう」
さすがエリカ、連れてきた甲斐がある。焼き物で出された和牛ロースもペロリ。伊勢エビもご飯も残さず食べきった。和のフルコースを堪能している。
「ほんとうに美味しかったわ。ジュンさん、今日は八王子まで連れてきてくれてありがとう!来て良かったー!!」
ほろ酔いのエリカが満面の笑みを浮かべてそう言った。
その言葉を聞けただけでも僕は充分だ。エリカの元気な姿を見れると、自然と僕も元気が出る。
明日からの仕事もより一層頑張れる。
「帰りのフェラーリのドライブも楽しみ」
日ごろ精力的に仕事を頑張っているからこそ、こういった大人の贅沢は大切だ。欠かせないエネルギーチャージの機会。
またこのフェラーリにも、鶯啼庵にもお世話になることがあるだろう。